星降るよるに。【2人台本】
星降るよるに。
少年
おとうさんにいじめられている男の子。
いもうともいる。
流星群にお願い事をしにいく。
お姉さん
通りすがりのせくしーなお姉さん。
ワルプルギスナハトと兼役です。
少年:ううっ…ひくっ…ぅ……
お姉さん:どうしたんだい、坊や。
少年:…だ、だれ…?
お姉さん:お姉さんは、通りすがりのお姉さんさ。君みたいなかっこいい男の子に、涙は似合わないよ。…よかったら、お姉さんになんで悲しいのか、泣いているのか…聴かせて。
少年:…あのね……おとうさんが…かぞくをいじめるの
お姉さん:おとうさんが?……君も、全身に傷を負っているね…。
少年:やさしかったおかあさんは、むかしにしんじゃって……おとうさんは、おかあさんがいなくなると、すごく、ぼくといもうとに、おこるようになった…
お姉さん:君の妹まで、いじめられているのかい?
少年:うん…そうなの。 それでね、きょうは流星群のよるって聞いて…おとうさんが町でお酒を飲んでいるあいだに、お願い事をしにきたの。
お姉さん:なんていう…お願い事?
少年:『おとうさんを ころして』…って。
お姉さん:……(すごく悲しそうに)
少年:…でも……だめだよね。…せっかくこんなに…きれいな…よるなのに。
お姉さん:………君の願い事は、きっと叶うよ。
少年:……ほんとう…?
お姉さん:ああ…ほんとうさ。お姉さんが太鼓判おしたげるよ。お父さんは死んで、君と妹はいっしょに仲良く幸せに暮らせる。
少年:うん…わかった!!ありがとう、お姉さん!!
お姉さん:さあ、だからもう自分の寝床におかえり。……夜が君を 呑み込む前に。(少し怖い感じで)
少年:うん!…ばいばい!お姉さん!!
お姉さん:気をつけてお帰りよー!!
(暫く間を開けて)
ワルプルギスナハト:さて……今日も迷える仔羊のお願い事を…聴いてあげようね。
ワルプルギスナハト:『夜は呑む。夜は呑む。
芯まで甘い魂を………星降るよるに。』
ワルプルギスナハト:…嗚呼……美味しい。舌が震えるほど甘くて…蕩けそう……。(悦に浸り)
ワルプルギスナハト:……私は、流星に願う哀れな人々の元に…赴き、願いを聞こう。
ワルプルギスナハト:だって……誰かに恨み尽くされるような悪虐な魂ほど……魔女にとっては至高の美食なのだから。(悦に浸りながら)
ナレーション:流星群の夜、お願い事をすると、魔女が叶えてくれる。
でも、そんじょそこらのお願いはまったく叶えてはくれない。
叶えてくれるのはそう…甘い魂を呼ぶ願いだけ。
そんな噂が町に流れるのは、もう暫くの、よるのあと。……